据え膳じゃなくても喰いたくなったら喰うけどね、結局は




 家に帰ると眼鏡の女がフリフリのエプロンをして「おかえりなさい、アナタ」と恥ずかしそうに言ってきた。神楽と顔を見合わせて小さく溜息を吐くと、その存在を無視して部屋へと上がる。

「帰ってくるなり不法侵入者と顔合わせるのはきついなー」
「セコムすればいいヨ」
「阿呆か、時代はアルソックだ」
「やだ!銀さんったら!警備プレイ?それが望みなの?」
「あ、銀ちゃん!ケーキあるよ、ケーキ。さっちゃんのお土産アルか?
「子供は食べちゃダメよ。それは大人のケーキだから」

 語尾にハートをつけながら、くねくねと動く隠密崩れはどこからどう見ても変質者のそれだ。目の前の甘味には大いに興味があるが、用意したのがこの女だと思うと喜んでは頂けない。

「お前なぁ、ケーキに罪はないだろ。変なもの入れてんじゃねーよ」
「な、何も入れてないわよ。ちょっといろいろ楽しめるかもしれない程度のエッセンスは入ってるかもしれないけど、それは大人の時間の      
「入れてんじゃねーか!」

 うだうだとやりあっている後ろで遅れて帰ってきた新八とが「ただいまー」と通り過ぎると、俺と眼鏡女を哀れな眼差しで見届けた新八が神楽の横へと座った。

「あれ、神楽ちゃん、それどうしたの?さっちゃんさんのお土産?」
「うん。大人の私への献上品ネ。新八とも食べていいヨ」

 すでに口いっぱいケーキを含んだ神楽が、バリエーションのたくさんある小さなケーキたちの入った箱をずいっと差し出した。見たことのない不思議な食べ物を前にが戸惑っていると、神楽は手近にあったノーマルな苺のショートケーキを掴み「」と口を開かせる。無理に押し込まれたそれに一瞬咽そうになりながら、けれどすぐに口に広がる甘さと溶けるようなしっとりとした食感には瞳をぱちくりとさせた。

「美味しい」

 それしか言葉が出てこないのか、は一言ぽつりと呟いた。新八と神楽はにこりと微笑んでケーキなるものの存在を教えている。 

「おいおいお前ら、銀さんを差し置いて仲良く団らんしてんじゃねーよ」
「あー!ない!私の苺のショートケーキはどこ?」
「土産に自分の分入れんな」
「さっちゃん苺好きだったのか?じゃあこっちのチョコのやつ食べればいいヨ。苺入ってるネ」
「ちがっ!」

 顔に押し付けるように神楽の掌に乗ったケーキが猿飛の口に入れられると、もぐもぐと口を動かしながらも声にならない言葉を放っていた。
「あ、僕お茶淹れてきます」と新八が立ち上がると、がその肩を押さえ「私がやります」と台所に消える。

「銀ちゃん、早くしないとなくなるヨ」
「あー待て、本当に大丈夫なのか?」
「問題ないヨ。強いて言うなら量が足りな……」

 続かなかった言葉に顔を上げると、神楽は次のケーキを持ったまま眠っていた。いやいや、いくらなんでも食欲睡眠欲と自分の欲に素直すぎるだろ、と訝しげに見ていると新八も静かに目を閉じていた。

「……お前、一服盛って俺に何するつもりだったんですかコノヤロー!」
「そんなの決まってるじゃない!あんなことやこんな……」

 くぅ。とそのまま眠りに落ちた猿飛はぱたりとソファへと倒れ込んだ。こんなに即効性の高い薬がすぐに手に入るなんて、腐っても隠密か、と妙なところで感心していると台所でがちゃんと大きな音が立つ。あぁ、も眠ってしまったのか。立ち上がり、後片付け面倒臭ぇなぁと大きな溜息を吐いた。



 台所へと顔を出すと、は何処か苦しそうに前屈みになってテーブルの端へとしがみついていた。てっきり眠っているとばかり思っていた銀時は不思議に感じながら、その横へと移動して「大丈夫か?」と覗く。

「ぎ、んさ……ん……身体が……っ……熱っ……」

 肩で息を繰り返し、吐き出された声には艶が含まれている。紅潮した頬に、うっすらと浮かんだ泪が欲情をそそり、銀時はごくりと喉を鳴らした。

「あの、くん?何をそんなに悶えて      じゃなくて、苦しんでるの?」
「わかり、ま……せん……」

 上目遣いで見上げてくるその表情は最早何かを懇願しているようにしか見えず、言わずもがな今の銀時の頭の中でのその「何か」は「ナニ」でしかない。猿飛が自分用と言っていた苺のケーキに仕込んでいたのはきっと催淫剤か何かだろう。
(あの女、俺を眠らせて自分にこんな薬仕込んで、既成事実でも作るつもりだったのか……恐ろしい)
 血の気が引きながら、とりあえずその目的が遂行されることはなく安堵した後、改めて目の前のをじっと見遣る。銀時は先程の気持ちを心の隅に置くと、猿飛へと賞賛を送った。
(……が、まぁ災い転じてとはこのことか。いい仕事したと今回は褒めてやろう)
 両腕を組んでニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながらすっと背後に回ると、後ろから抱き込む体勢でその耳元へと息がかかるようにわざと顔を近付けて囁いた。

、大丈夫か?あの女、ケーキに一服盛ってたみたいだな」

 かかった息にびくりと身体を震わせると、力なく振り返ったは「どう、すれば……」と声にならない声を出す。その泣き出してしまいそうな表情に、いつだったか沖田が「あの人見てると、泣かせて、よがらせたくなるんでさぁ」とさらりと素で言ってのけたことを思い出し、ああ、どうしよう、今ならなんかあの気持ちがわかるかも、と湧き上がる加虐心を在りのまま受入れた。

「とりあえず、銀さんに任せてみる?」

 耳元から首筋へと唇を這わせ、その白い箇所にちゅくと音が鳴るように軽く吸い付くと、が濡れた瞳を懸命に開いて見上げてくる。その瞳に宿る不安を銀時は勝手に期待に変換して、今度はきつく紅い痕を残すように吸い上げた。「っ……」と漏れたの声に素直に欲情する己自身に苦笑する。
(最近、一人で慰めるのもご無沙汰だったしなぁ。金がねぇからいかがわしい大人の店にももちろん行けてなかったし)
 邪魔なガキ共は深い夢の中だ。これは久々に思いっきり大人の時間を楽しめるかもしれないと、込み上げた高揚感を隠して銀時は自分を落ち着かせるためにも深呼吸をした。
 今にも崩れ落ちそうに気力だけで何とか立っているの腿へと手を伸ばして、長着の合わせからするりと手を差し入れる。柔らかな内腿は全ての指へ吸い付いてくるようで、伝わる感触に息を呑んだ。

「……待っ……て、銀さ……んっ……」

 精一杯の牽制のつもりか、が止めるようにあわせてきた手には、しかし力は入っていない。

「待っていいの?」

 意地悪く耳元で囁いて、のその熱のこもった部分に触れるか触れないかのギリギリのところで、つつっと指を這わせると、今度は色濃く戸惑いとは違う種類の吐息が漏れた。薬の所為なのか身体の全てが熱く、軽く触れただけで過剰に反応を返してくる。その仕草に異様に興奮しながらも、銀時は逸る気持ちをぐっと堪えてから手を離した。声を出すまいと口をぎゅっと結んでいるのに、離れた銀時の手を縋るように映す瞳は身体と心の矛盾を物語っている。
(その表情は反則。誘ってるようにしか見えねぇよ)
 薬の力ってすごいなぁと感心しながら「」と甘く囁いた。

「舌出して、べーって」

 理性が邪魔しながらも、欲望に耐えられないの身体は存外素直に銀時に従う。恐る恐る出された舌先に自分の舌を絡めると、貪るようにその口を塞いだ。力なく胸を押してくる腕はだんだんと下へ降りていく。だらんと完全に力の抜けた掌へ指を滑らせると、銀時はその手をとって自分の股間へと触れさせる。

「ほら、がそんな顔するから銀さんのこんなになっちゃった」

 いやいやと首を振って生娘よろしくの可愛い反応を楽しもうと悪趣味なオヤジを演じてみれば、は俯いたままゆっくりとその場に座り込んだ。ん?と顔を見ようと銀時も座ろうとすると、の掌はゆるく動きながらも銀時自身から離れようとはしない。

「おーい!?くん?そんな積極的に……」

 戸惑い半分、期待半分で締りの無い顔をしていると顔を上げたとばちりと視線が重なった。とろんと溶けたような瞳に映るのは、確実に甘い誘惑でしかない。うっすらと半開きになった口元が微かに弧を描いたように見えて、どくんと高鳴ったのは心臓かそれとも下半身か。
(据え膳喰わぬはなんとやらってな。こんなご馳走前にして黙ってられるかってーの)
 屈んで更に深く口付けようとするより早く、の手が銀時の合わせへと滑り込んでくる。「……ちょっ」牽制よりも先に下着がずり下ろされると、間髪入れずにの口内へと銀時自身が納められた。
 ぞわりと全身を巡る快楽の波に一瞬目を閉じて、両手での頭を掴む。お構いなしに添えた両手と銜えた口を動かすその端からは、淫猥な音と共に溢れた唾液が伝い、周りの空気を一層濃くしていった。

「おいおい、そんなに我慢できないの?躾のなってないくんには銀さんが手取り足取り教えてやらなきゃなぁ」

 銀時を口に含んだまま熱を持った瞳で見上げるにくくっと喉を鳴らすと、添えていた右手で前髪をかき上げそのまま頬をすっと撫でる。耳元から後頭部へと指を滑り込ませると、の頭を気持ち強く前へと押しやった。

「んっ……」
「ほらほら、もっと奥まで銜えてくんなきゃ銀さん満足しないよ」
「……っ……んぁ……」
「くっ……そうそう、上手上手」

 子供を褒めるように左手での頭を撫でる。懸命に銀時を貪るに、時折自ら腰を動かしてその光景を楽しみながら奉仕の時間は暫く続いた。

、膝ついて腰落とせ」

 云われるがままに従う姿に男としての征服感を満喫しながら、銀時は自身に手を伸ばした。こんな状況になってから初めて触れるその場所は、すでに銀時のそれと等しく先端がぬるりとした体液を纏っている。
 指に絡みついたその液をそのまま後ろの秘部へと宛がうと、驚くほどにするりと入り口を通った。熱いその中はすんなりと受入れた入り口とは違い、きゅうきゅうと押し返してくる肉壁が抵抗しながらも指へと吸い付いてくるようで、銀時はめくるめく妄想にごくりと唾を飲む。
(指でこんなんじゃ、俺の挿れたら……)

「……やべっ」

 思わず声に出てしまう。さっきの奉仕で銀時自身は準備万端なのに、今の想像だけで更なる血が集中したのがわかって慌てて指を引き抜くと、銀時はを後ろから抱き込んで両手で自身を柔らかく包んだ。

くんのココ、薬のせいでこんなんなっちゃってるからさぁ」

 びくんと反応しながら甘い息を漏らすにくちゅくちゅとわざとらしい音を立て、銀時は囁きながら耳元へ舌を這わせる。

「銀さんが特別な注射打って治してあげようか?」

 酔ったオヤジが言いそうな下ネタも、ツッコミ役の新八がいなければそれはただ、そのままの意味でしかない。銀時は熱くそそり立った自身をのそこへと宛がうと、先端をぐっと押し付けた。「……っ……」と逃げ腰になるの腰をがっしりと掴むと、ゆっくりと自分の腰を沈めていく。

「ん……っ……あ……っ」
「やっぱきつくて……くっ……あー、やばい、やばい」

 深く息を吐いて、の呼吸が整うのを待つ。
(これ、違うこと考えないとマジでやばいな)

「ぎ……んさ……っ……」
「ん?」
「も……やっ……あっ……」
「嫌って言っても、もうこの状況じゃどうにもなんねぇよ」
「で、もっ……」
「無理。動いていい?動いちゃうよ?」

 ゆっくりと腰を動かし始めると、の声の微かに戻った理性の抵抗も空しく再び押し寄せる快楽に呑まれて残るのはただの本能でしかない。色を含むその嬌声を聴きながら、銀時の動きは徐々に加速していった。

「はっ……本当はさー、銀さんいつもなら大人の余裕で相手をちゃんと先にイかせて気持ちよくしてあげる紳士なんだけど」
「あ……っ……ん……」
「この回は野生の狼ってことでいい?があんまりにも美味しそうに”食べて”ってしがみついてきたんだし?」

 自身を挿入したままの腰を持ち上げて顔がよく見えるように体勢を変える。きゅっと瞑った目とは対照的に、半開きになった口から引っ切り無しに漏れる甘い声は男を本能に還す効果としては充分だ。それがなら尚更だな、と銀時は口角を上げた。

「一回、中に出すから、その後もっかい、な?」

 激しく腰を動かしながら一気に追い立てると、銀時のモノを締め付けるようにの内側がヒクヒクと痙攣する。嬌声はより一層高いものに変わり、の限界も近いことを自ら身体で示していた。

「……くっ……出るっ……」
「んっ……あぁっ……」

 深く打ち付けた腰を余韻を楽しむようにぐりぐりと押し付けて、銀時はの唇を舐め上げた。

「っ……はっ……後ろだけでイっちゃうほど、銀さんの息子、良かった?」

 呼吸が追い付かずに肩で息をするは、苦しそうにうっすらと泪を浮かべた瞳を開けると、銀時の首へとぎゅっとしがみ付いて紅くなった顔を隠す。
(可愛いすぎるんですけどぉぉぉぉぉ)
 ゆるんだ口元を直すことなく抱き返すと、の声がダイレクトに達したばかりの下半身に響いた。

「きもちっ……よすぎる、からっ……もっと、して?……」

 銀時は第二ラウンド突入の準備を嬉々として行いながら、あとで猿飛にこの薬をわけてもらおうと心底思った。
(この一回で終わらせるには勿体なさすぎる……)










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